骨密度の増加には、3年以上の投薬が必要

骨粗鬆症今回は骨粗鬆症検査のポイントと治療について説明します。
骨密度の測定は、腰椎と股関節を測定できるDXA法(デキサ法)が望ましいです。
かかとや手首の骨の骨密度測定は、最新の骨粗鬆症の診断基準では除外されています。

御面倒ではありますが、腰椎と股関節の骨密度を測定できるか、医療機関に問い合わせてみることも大切です。近年骨粗鬆症は遺伝的素因のある病気と考えられています。身近な身内に股関節の骨折や、背骨の骨折で背中が丸くなって苦労した方がいる場合は、自身の骨粗鬆症も疑われます。このような場合も早期に骨密度の測定検査をおすすめします。

骨粗鬆症は、はじめは自覚症状がありません。
背中や腰が重い程度の症状を感じる方もいますが、気付いた時には進行していたという事が多く、骨折を起こして骨粗鬆症と診断された人が多いのが実態です。

「尻餅をついて腰を(圧迫)骨折した」
「物を持ち上げたら背骨を(圧迫)骨折した」
「ぎっくりだと思ったら背骨が(圧迫)骨折した」など、軽い転倒や重量物の運搬で簡単に骨折が起こる事象は「脆弱性骨折」と定義され、このような方は、直ぐに骨粗鬆症治療を始めるべきだと勧告されています。

これを見逃して放置すると、更なる「骨折連鎖」を生じて、日常生活が営めなくなり、代償が大きくなります。

「圧迫骨折」の急性期は硬めのコルセットを装着し、疼痛緩和治療も行い、厳重に管理しなければいけません。

ところが通常の腰痛と勘違いして、無理をして悪化させる患者さんが後を絶ちません。「圧迫骨折」は骨折部を早く固めて、骨折治癒させる事が肝要ですが、何年経っても治療が旨く行かないのが現実です。

しかしながら骨粗鬆症の治療薬は日進月歩で、最新のものを含めると充実した内容になってきています。患者さんの痛みの状態や骨折の有無、骨代謝の状態によって、様々な薬剤が選択可能になっています。

X線検査にて、脊椎の圧迫骨折を認め、痛みが強く治り難い場合は、「骨形成促進剤」が選択される場合があります。この治療薬は「骨形成」を促す注射製剤ですが、骨折部位の治癒促進効果があります。コルセット療法や疼痛緩和治療と併用して対応することもあります。

血液検査で骨代謝マーカーという「骨量の目減りが早いかどうかを判定する検査」があります。この検査で「破骨細胞」の骨代謝マーカーが高値の場合は、「骨吸収」という骨の損失状態が過剰と判定され、「破骨細胞」の活動を止める「骨吸収抑制剤」が選択されます。起床時の空腹時に水で服用するビスフォスフォネート製剤が知られていますが、デノスマブ製剤という、ワクチンのような分子製剤も使用され、半年に1回の皮下注射で「破骨細胞」の活動を止める事も可能になっています。

専門医の適正なる診断を受けて、治療薬を選択してもらう事が重要ですが、何よりも大切なのは「治療の継続性」です。少なくとも3年位は治療薬を継続しないと骨密度の増加等の良い結果は導けません。学会の調査では、骨粗鬆症治療を開始した患者さんの5割が、1年で治療から脱落している事が報告されています。骨はゆっくりと新陳代謝されて成長する「樹木」のような組織なので、焦りは禁物なのです。

80歳以降の患者さんにとっても、簡単で面倒のない治療も選択できる時代になり、90歳を超えても元気に体を動かし、いきいきとした生活を送れる見通しになっています。骨粗鬆症は問題が起こる前に「早期発見」「早期治療」を忘れずに。